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亀の恩返し

更新日:2015-11-03
むかしむかし、近江の国(滋賀県)に、一人の貧乏な男が住んでいました。
男にはよく働くお嫁さんがいてお嫁さんは人に雇われてはたを織って暮らしを助けていました。
お嫁さんは仕事の合間のわずかな時間を利用して自分の布を織っていました。
しかし仕事の合間に織るのでなかなか布が仕上がりません。
長い長い時間がかかりましたがお嫁さんはやっと一反(いったん「着物一人分の布)だけ
織りあげることが出来ました。
お嫁さんはその布を家に持って帰って男に言いました。
「この布を魚と取り替えてきていただけませんか?」
「魚と?」
「はい、琵琶湖のほとりの矢橋には漁師が大勢いて魚を取ってくれるそうです。
そこへ行って魚と取り替えてきてください。
その魚をイネモミと取り替えて来年から田んぼを作ろうではありませんか。
そうすればきっと暮らしが良くなるでしょう」
「それは良い考えだ」
男はさっそく布を持って矢橋に出かけました。
そして漁師にあみをひいてもらいましたが運の悪い事に魚は一匹もかかりません。
ただ大きな亀が一匹かかっただけです。
「ちえっ、一匹もとれねぇ」
漁師は腹立ちまぎれにその亀を叩き殺そうとしました。
それを見た男は亀が可哀想になって言いました。
「待っておくれ、その亀をもらうよ。この布でその亀を買うよ。」
「えっ?この亀でいいのかい?」
「ああ、目の前で殺されるのはしのびない。」
漁師は大喜びで布をもらって亀を男に渡しました。
男は亀を両手にかかえて
「亀には万年の寿命があると聞いている。がんばって万年生きるんだよ」
と亀に言うとそのまま琵琶湖にはなしてやりました。
こうして男は手ぶらで家に帰ってきました。
「どうでした?無事に魚を買う事は出来ましたか?」
お嫁さんが尋ねると男は気まずそうに言いました。
「うん、その、・・・・・布は亀と取り替えて亀の命を助けてやったよ」
「まぁ、お前さんは・・・・・」
お嫁さんはそれだけ言うと悲しそうにうつむいてしまいました。
そしてそれからいく日もたたないうちに男は病気になって死んでしまいました。
お嫁さんは泣きながら男の亡がらを近くの山崎という所に葬りました。
ところがそれから三日たってそこを通りかかった一人の旅人が息を吹き返した男を見つけたのです。
知らせを受けたお嫁さんはすぐに山崎へ走って行くと道ばたに倒れている男を
背中に背負って家に連れて帰りました。
男はお嫁さんの介抱でしでいに元気を取り戻しました。
そしてある日お嫁さんにこんな事を話して聞かせました。
「わたしが死んだとき地獄の役人においたてられてひとつの役所の門に出た。
門の前にはたくさんの人間たちがしばられて転がっていた。
『わたしもこんなふうにしばられるのか』
と、恐ろしさで震えているとそこへ一人の小僧さんが出てきて
『わしは地蔵さまだ。お前はわしのために恩をほどこしてくれたな。
わしは命をもっている者にめぐみをほどこしてやろうと思って湖のほとりで亀になっていたことがある。
そのときお前はわしを買い取って命を助けてくれた。本当に良い行いをしてくれた』
と、言ってくれたのだ。
そこで地獄の役人どもは私を助けてくれた。
すると小僧の地蔵さまはまたおっしゃった。
『お前は国に帰ってこの後も必ず良い行いをつむがよい。そうすればきっと幸せになれる』
ちょうどその時二十歳ぐらいのきれいな娘さんが鬼にしばられてやってきたのだ。
そこでわたしはそっと娘に聞いてみたんだ。
『あなたはどこの人かね?』
すると娘さんは泣きながら答えた。
『わたしは筑前の国(福岡県)の者でございます。今日、急に父母と別れて鬼におわれた者でございます。』
わたしはこれを聞くと、とても気の毒になって地蔵さまに申し上げたんだ。
『わたしはもうだいぶ年を取りました。生き返っても残りの命はいくらもございません。
しかしあの娘はまだ若くこれから先が長いように思われます。
どうかわたしの代わりにあの娘を助けてやってください。』
すると地蔵さまはこうおっしゃった。
『お前は実にあわれみ深い男だ。わが身に代えて人を助けるなどということは
なかなか出来ることではない。お前の立派な心に感心した。だから特別に二人とも助けてやる』
その娘さんは泣きながら喜んで帰って行ったよ」
お嫁さんは話を聞き終わるとすっかり男のやさしさに感心しました。
それからしばらくたって男は地獄で会った娘さんをたずねてみたくなりました。
そこで筑前の国に行って色々たずねてみると筑前の国の大領(長官)の娘だということがわかりました。
男はその家に行って娘のことをたずなると
「はい、あの娘は病気になって死にましたが不思議なことに二、三日して生き返ったのです!」
と、いうのです。
そこで男は「あの世で会った男がたずねてきた」と伝えてもらいました。
その娘は確かにあの時の娘です。
二人は互いに涙を流してあの時の事を語り合いました。
やがて男は近江の国へ帰ると地蔵さまの言う通りに良い行いをつんで
お嫁さんと二人で幸せに暮らしました。


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